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日本ル-ラルナ-シング学会設立趣意書

日本ル-ラルナ-シング学会設立趣意書

保健医療の面からみた遠隔地(過疎地域、豪雪地帯、山村、離島等、以下へき地)における医療提供体制の確保は、わが国の医療政策における重要課題です。これまでもへき地保健医療対策の推進、医療計画の導入等により、各都道府県等における計画的な取組が求められ、国としてもこれを支援してきています。それにもかかわらず医療の地域偏在は依然として大きな問題です。へき地においては、医師の確保が最優先課題とされますが、保健医療福祉資源が乏しい地域だからこそ、健康の保持増進や住民の主体的な保健活動への支援やチ-ム医療が重要になります。平成16年2月に地域医療に関する関係省庁連絡会議により出された「へき地を含む地域における医師の確保等の推進について」においても、医療水準の向上のために、医師はもちろんのこと、看護師への生涯教育の提供の重要性が述べられています。

へき地で働く看護職の調査については、20数年以上前に駐在保健婦の活動が数件ある程度でした。最近では、看護系大学の増加に伴い、設置されている地域の特徴に合わせて、あるいは看護の行き届いていない部分にも目を向けた結果として、県レベルでへき地における看護活動の質の向上や人材育成に焦点をあてている大学もみられるようになりました。

自治医科大学看護学部では、開設と同時に、へき地に勤務する看護職を対象に調査(平成14~15年度)を行いました。その調査結果から、へき地診療所を利用している患者の中心年代は65歳以上であり、高齢者がその地域に住み続けるために、自立した生活をいかに延長できるか、そのための高齢者に対する看護活動をどう展開していくかということが、へき地における大きな課題であることが明らかになりました。また、全国の傾向と同様、生活習慣病や慢性疾患が多くみられ、そこには地域に特有な食文化や食糧保存の習慣等が関連している場合もあり、その地域の生活状況を考慮しながら、生活習慣病の予防から自己管理まで支援していく看護活動が必要であると考えられました。さらには、地理的状況から二次医療機関、後方支援病院まで遠く、救急時の対応、受診・疾病発見の遅れ、通院負担等の問題、島や豪雪地帯等閉ざされた生活が関連していると考えられる精神面の問題、社会資源の活用や社会資源利用に関する住民の意識の特性にも看護が対応していく必要があります。

一方、へき地に勤務する看護職は、診療の補助以外に救急時・医師不在時の対応、住民に身近な存在としての相談的役割、関係者・機関と連携しケアチ-ムの一員としての在宅ケアの実施、社会資源利用に関わる援助、地域住民のつながりを把握しそれを活かした看護活動等幅広い活動を実施している状況が明らかになりました。

しかし、研修・研鑽の機会が少なく新しい情報が入手しにくいこと、相談できるバックアップ機関やサポ-ト者がいないというサポ-ト体制の不足も明らかになり、へき地に勤務する看護職の研修・サポ-ト体制の構築が課題であると考えられました。

このようにへき地に勤務する看護職には、プライマリ・ケアの担い手として、小児から高齢者まで、また慢性期から救命救急、終末期までとあらゆる発達段階、あらゆる健康レベルの対象への看護が求められます。幅広い総合的な能力を求められるへき地看護活動のための人材育成、へき地に勤務する看護職のための生涯を通じた研修・サポ-ト体制が必要であり、このことが地域ケアの水準の向上に資すると考えます。

そこで、私たちは、へき地、並びに、へき地を含む地域の中核病院・保健所に勤務する看護職やル-ラルナ-シングに関心を寄せている教育研究者にご意見を伺い、その結果、研究活動を活発にし、その成果をへき地看護の人材育成やへき地における看護実践者の生涯学習に還元していくことが必要との結論に達しました。そして、日本ル-ラルナ-シング学会の設立を提案することとなりました。

日本ル-ラルナ-シング学会の目的は、研究の充実を図り、活発で現実的な意見交換を行い、海外教育研究者との交流も図りつつ、その成果をル-ラルナ-シングに携わる教育研究者・実践者と共有していくことであります。そして、へき地における看護について現在個々になされている研究から得られる知見の統合・体系化を図り、日本におけるル-ラルナ-シングを確立することをめざします。

以上述べたところをご理解いただき、是非とも日本ル-ラルナ-シング学会へご参加下さいますよう、お誘い致します。